VXLAN(Virtual eXtensible LAN)は、IPネットワークの上に仮想的なレイヤー2ネットワークを作る技術です。データセンターやクラウド基盤で広く使われており、CCNP ENCOR(350-401)でも「仮想化」分野の出題範囲に含まれています。
この記事では、VXLANの仕組みとVLANとの違いを、試験対策で押さえるべきポイントに絞って解説します。
先に結論から
- VXLANは、レイヤー2のフレームをUDPパケットに包んでIPネットワーク越しに運ぶ「L2 over L3」の技術です。
- セグメントの識別子はVNI(24ビット)で、約1,600万個のネットワークを作れます。VLAN(12ビット・約4,000個)の上限を超えられるのが大きな特長です。
- カプセル化と非カプセル化を行う装置をVTEPと呼びます。カプセル化には宛先UDPポート4789が使われます。
- カプセル化で約50バイトのヘッダーが加わるため、アンダーレイ側のMTUに余裕を持たせる設計が必要です。
VXLANとは
VXLANは、イーサネットフレーム(レイヤー2)をそのままUDP/IPパケットの中に入れて運ぶトンネル技術です。物理的には離れた場所にある機器同士を、あたかも同じレイヤー2ネットワーク(同じセグメント)につながっているかのように通信させられます。
このとき、実際にパケットを運ぶIPネットワークをアンダーレイ、その上に作られる仮想的なレイヤー2ネットワークをオーバーレイと呼びます。VXLANは代表的なオーバーレイ技術の1つです。
VXLANが必要とされる理由

1. VLANの数の上限を超えられる
VLAN IDは12ビットのため、使えるVLANは最大で約4,000個です。多くの利用者(テナント)を収容するデータセンターやクラウドでは、この数では足りなくなります。VXLANの識別子であるVNIは24ビットあり、約1,600万個のセグメントを作れます。
2. レイヤー3のネットワークを越えてレイヤー2を延ばせる
仮想マシンを別のサーバーへ移動しても、IPアドレスを変えずに通信を続けたい場面があります。VXLANを使えば、ルーティングされたIPネットワークの上に同じレイヤー2セグメントを延ばせるため、こうした要件に対応できます。
3. スパニングツリーに頼らない設計ができる
アンダーレイはIPネットワークなので、OSPFやBGPといったルーティングプロトコルで複数の経路を同時に使えます(ECMP)。レイヤー2を大きく広げたときに問題になりやすい、スパニングツリーによる経路のブロックやループのリスクを避けやすくなります。
VXLANの仕組み

VTEP:カプセル化を行う装置
VTEP(VXLAN Tunnel End Point)は、VXLANトンネルの出入口となる装置です。送信側のVTEPは、端末から受け取ったイーサネットフレームにVXLANヘッダーとUDP・IPヘッダーを付けて(カプセル化して)アンダーレイへ送り出します。受信側のVTEPはそのヘッダーを外し(非カプセル化し)、元のフレームを宛先の端末へ届けます。VTEPには、物理スイッチがなる場合と、サーバー上の仮想スイッチがなる場合があります。
VNI:セグメントを識別する番号
VNI(VXLAN Network Identifier)は、どの仮想ネットワークのフレームかを識別する24ビットの番号です。VLANにおけるVLAN IDに相当します。同じVNIに属する端末同士は、同じレイヤー2セグメントにいるものとして通信できます。
カプセル化されたパケットの構造
VXLANでカプセル化されたパケットは、外側から次の順に並びます。
| ヘッダー | 大きさ | 役割 |
|---|---|---|
| 外側のイーサネットヘッダー | 14バイト | アンダーレイでの次の機器までの転送 |
| 外側のIPヘッダー | 20バイト(IPv4) | 送信元・宛先VTEPのIPアドレス |
| 外側のUDPヘッダー | 8バイト | 宛先ポートは4789 |
| VXLANヘッダー | 8バイト | VNIを格納 |
| 元のイーサネットフレーム | — | 端末が送ったフレームそのもの |
このヘッダーの分だけパケットが大きくなるため、アンダーレイのMTUを標準の1,500バイトのままにしておくと、端末側のフレームが分割されたり破棄されたりする原因になります。アンダーレイのMTUを大きめ(ジャンボフレームなど)に設定するのが一般的です。
宛先VTEPの見つけ方
VTEPは「宛先のMACアドレスがどのVTEPの先にいるか」を知る必要があります。その方法は大きく2つです。
- フラッド&ラーン:宛先が分からないフレームをマルチキャストなどで関係するVTEPすべてに送り、返ってきた通信から対応関係を学習する方式です。設定はシンプルですが、規模が大きくなると無駄な通信が増えます。
- BGP EVPN:MP-BGPを使って、MACアドレスやIPアドレスとVTEPの対応をVTEP同士で事前に交換する方式です。大規模なデータセンターでは、こちらが主流です。
VXLANとVLANの違い
| 項目 | VLAN | VXLAN |
|---|---|---|
| 識別子 | VLAN ID(12ビット) | VNI(24ビット) |
| 作れる数 | 約4,000 | 約1,600万 |
| 届く範囲 | レイヤー2のネットワーク内 | IPで到達できる範囲ならどこでも |
| 転送の仕組み | フレームにタグを付けて転送 | フレームをUDP/IPでカプセル化して転送 |
| 経路の冗長化 | スパニングツリーに依存しやすい | アンダーレイのルーティング(ECMP)を利用できる |
ENCORの試験対策で押さえるポイント
ENCORでは、VXLANは「仮想化」分野(比重10%)で、VRF、GRE・IPsecトンネル、LISPなどと並んで出題範囲に含まれています。細かい設定コマンドよりも、次のような「仕組みを説明できるか」を問う内容が中心です。
- VXLANがレイヤー2をレイヤー3越しに運ぶ技術であること(L2 over L3)
- VTEP・VNIの役割と、VNIが24ビットであること
- カプセル化にUDP(宛先ポート4789)が使われること
- アンダーレイとオーバーレイの違い
- SD-AccessなどCiscoのソリューションでも、データの転送にVXLANが使われていること
ENCOR全体の学習の進め方は、CCNP ENCORの勉強方法の記事で紹介しています。
よくある質問
VXLANはVLANの代わりになるのですか?
置き換えというより、組み合わせて使う技術です。端末やサーバーが接続する部分では引き続きVLANが使われ、VTEPがVLANとVNIを対応づけて、IPネットワーク越しにレイヤー2を延ばします。
VXLANで使われるUDPのポート番号は何番ですか?
標準の宛先ポートは4789番です(RFC 7348)。
VNIはいくつまで作れますか?
VNIは24ビットなので、理論上は約1,600万個(2の24乗)のセグメントを作れます。
ENCORの出題範囲に沿った問題演習には、Smart InnovationのCCNP ENCOR対策問題集もご活用ください。
